高圧ガス保安法における「認定制度」とは?要件やメリットをわかりやすく解説
目次
高圧ガス保安法の歴史は、旧法と呼ばれる「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」が公布された1922年まで遡ります。その後1951年に「高圧ガス取締法」が制定され、2度の法改正を経たのち、1996年には自主保安の推進が明確化された「高圧ガス保安法」が定められました。
今回の記事では「高圧ガス保安法」、および改正後の「改正高圧ガス保安法」のなかで産業保安の維持・向上のために設けられている様々な認定制度を紹介し、概要や認定を受けることで得られるインセンティブなどを解説します。
また、2017年から開始されている「新認定事業所制度」と、2023年からスタートした「認定高度保安実施者事業制度」の違いも図を用いながら説明しています。ぜひ参考にしてみてください。
認定高度保安実施者事業制度とは【連続運転事業所向け】
「認定高度保安実施者事業制度」は2023年からスタートした、連続運転の事業者(1年以上停止することなく連続する設備運転)を対象とする認定制度です。
近年の産業保安分野では設備の老朽化や人材不足などの問題が浮き彫りとなっており、解決策の1つとして「スマート技術(スマート保安)」が注目されています。そのため高圧ガス保安法が改正(「改正高圧ガス保安法」という)、また認定高度保安実施制度が創設され、認定要件には新たに「高度なスマート技術の活用等」が加わりました。
【関連記事】スマート保安について基礎から分かりやすく解説した記事です。あわせてご覧ください。
概要と対象
ここからは、認定高度保安実施者制度の概要を図表を交えて解説します。
本制度の対象と概要は以下の通りです(表1)。
また、認定高度保安実施者制度で新たに追加された要件は以下の通りです(表2)。
特に「テクノロジーの活用(スマート保安)」に関しては、経済産業省によって「スマート保安アクションプラン」の策定がなされるなど、国が積極的に推進している項目となっています。
A認定を受けるメリット
認定高度保安実施者制度には、上表2で記されているように「A認定」と「B認定」の2種類があり、取得難易度はA認定>B認定の順となります。そのため、認定後に受けられるインセンティブは認定ごとに異なります。
A認定を受けた事業所では、下記の事項が可能になります。
*予定(2023年10月時点)
|
B認定を受けるメリット
B認定を受けた事業所では、下記の事項が可能になります。
*予定(2023年10月時点)
|
【図で解説】現行制度と何が違う?
2024年5月現在、連続運転の事業所は、改正前の「新認定事業所制度」への申請も可能となっており、改正前(新認定事業所制度)と改正後(認定高度保安実施者事業制度)のどちらの制度も機能しています。
そのため「新認定事業所制度(左図)」は”現行制度”と称されていますが、図からも分かるように”現行制度” は「スーパー認定事業所制度」および、「認定事業所制度」が当てはまります。
ではこの”現行制度” と2023年12月からスタートした「認定高度保安実施者事業制度」にはどのような違いがあるのでしょうか。
下記の表3は「認定高度保安実施者事業制度」において新たに追加(変更)された項目、すなわち現行制度と異なる点です。
おもに行政手続における簡素化が図られたため、工事や完成検査などの実施後は速やかな設備運転再開が可能になりました。
*「新認定事業所制度(2017年~)」は多段階評価を採用した制度です。そのため、「スーパー認定事業所制度」・「認定事業所制度」以外に、「自主保安高度化事業所制度」という制度も含まれます。しかしこれは、前述の2制度と対象の事業所や求められる要件が異なるため、特徴は記事の後半(第4章)で解説します。 |
経済産業省への申請方法
事業者が認定高度保安実施者事業制度の認定を受けたい場合は、経済産業省への申請が必要です。下記の高圧ガス保安協会ホームページを参考にしてください。
https://www.khk.or.jp/inspection_certification/inservice/new_certification.html
スーパー認定事業所制度とは【連続運転事業所向け】
2024年4月現在は、新制度の「認定高度保安実施者事業制度(A認定)」と、現行制度である「スーパー認定事業所制度」のどちらもが機能しています。
ここでは「スーパー認定事業所制度」について解説します。
概要と対象
「スーパー認定事業所」 は、IoTやビッグデータの活用・高度なリスクアセスメントなど、ハイレベルな保安の取り組みを実施していることを認められた事業所です。昨今課題とされているプラント設備の老朽化やベテラン従業員の減少、多様化する災害などを解決するため、自主保安を促進し、産業界の保安力向上を担うことが期待されています。
なお対象は「連続運転している事業所*」です。*1年以上停止することなく連続する設備運転
スーパー認定事業所になるメリット
スーパー認定事業所と認められた場合は、下記の事項が可能になります。
|
経済産業省への申請方法
事業者がスーパー認定事業所の認定を受けたい場合は、経済産業省への申請が必要です。詳しい要件や申請方法は下記の高圧ガス保安協会ホームページを参考にしてください。
https://www.khk.or.jp/inspection_certification/inservice/specific_certification_business.html
認定事業所とは【連続運転事業所向け】
次に「認定事業所」について解説します。
2024年4月現在は、新制度の「認定高度保安実施者事業制度(B認定)」と、現行制度である「認定事業所」のどちらもが機能しています。
第2章で示したように、現行制度といわれる「スーパー認定事業所制度」は、新認定事業所制度(2017年~)のうちの1つです。新認定事業所制度は多段階評価に基づいているため、スーパー認定事業所のほかに本章で解説する「認定事業所」や、次章で解説する「自主保安高度化事業所制度」があり、ここで紹介する「認定事業所」は、「スーパー認定事業所制度」より求められる要件が少なくなっています。
概要と対象
「認定事業所」とは、検査体制の確立やリスクアセスメント等の取り組みをおこなっており、安全性の担保を認められた事業所です。
なお対象は「連続運転している事業所*」です。*1年以上停止することなく連続する設備運転
認定事業所になるメリット
認定事業所と認められた場合は、下記の事項が可能になります。
|
経済産業省への申請方法
事業者が認定事業所の認定を受けたい場合は、経済産業省への申請が必要です。詳しい要件や申請方法は下記の高圧ガス保安協会ホームページを参考にしてください。
https://www.khk.or.jp/inspection_certification/inservice/inspec_exect_survey.html
自主保安高度化事業者制度とは【非連続運転事業所向け】
続いて、「自主保安高度化事業所」について解説します。
今まで紹介した制度は「連続運転している事業所」が対象でしたが、これは「連続運転していない事業所(非連続運転事業所)*」を対象とした制度です。 * 1年以内に設備を停止し点検等の実施を想定
概要
「自主保安高度化事業者」 とは、高圧ガスの保安に関する自主的な活動を十分におこなっていると認められた事業者です。
リスクアセスメント・PDCAサイクルによる保安体制の継続的改善の実施が求められ、業界の自主保安の取り組みを推進させることが期待されています。
自主保安高度化事業者になるメリット
自主保安高度化事業所と認められた場合は、下記の事項が可能になります。
*この要件適用を希望する場合は、 機器の寿命管理・開放検査体制・検査記録等の活用に関する要件を満たすことも必要です。 |
制度改正により新たに追加された要件
高圧ガス保安法の改正により、「自主保安高度化事業者制度」に新たな要件が追加されました。改正前は先述した通り、おもにリスクアセスメントの実施・PDCAサイクルによる保安体制の継続的改善などが求められていましたが、新たに「寿命管理、解放検査体制の構築および検査記録の活用」が加わっています。
経済産業省への申請方法
自主保安高度化事業所の認定を受けたい場合は、経済産業省への申請が必要です。詳しい要件や申請方法は下記の高圧ガス保安協会ホームページを参考にしてください。 https://www.khk.or.jp/inspection_certification/inservice/maintenance_improvement_business.html
まとめ
今回は、産業保安の維持・向上に欠かせない「認定制度」を紹介しました。ぜひ参考にしてください。
【関連記事】