2025.03.21
洋上風力発電とは?日本・海外の現状や課題を詳しく解説 0

目次
2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、EUを中心に世界各国で再生可能エネルギーの導入が進められています。今回はその中の「洋上風力発電」をテーマとし、洋上風力発電の概念、求められる背景や、現状と課題について詳しく解説します。
洋上風力発電とは

洋上風力発電とは洋上に風車を建設し、風のエネルギーを利用して電気を作り出す発電方法です。風を利用するため、持続可能で環境にやさしい発電方式といえます。
陸上風力と比較すると、洋上では安定した強い風が期待できることから”一定の発電量”が見込まれます。そのため広大なエリアに風車を設置でき、風車の大型化が可能です。しかし洋上での建設コストは高く、海象条件が施工に影響を及ぼしています。
洋上風力発電が注目されている理由
世界では、地球温暖化の主な原因とされているCO2を削減しようという動きが広がっています。日本でも「第7次エネルギー基本計画」や「グリーン成長戦略」が掲げられ、中でも洋上風力発電は重要な役割を期待されています。
「第7次エネルギー基本計画」では2040年の電源構成において、再生可能エネルギーの比率が40~50%に引き上げられ、最大の電源に位置付けられています。内訳は太陽光が22%~29%・風力が4%~8%です。また「グリーン成長戦略」とは将来のエネルギー・環境の革新技術について、「社会実装を見据えた技術戦略+産業戦略」を示したものです。
下図はグリーン成長戦略の概要として政府が定める、「2050年に向けて成長が期待される14の重点分野」です。その1つに「洋上風力発電」が選定されています。

洋上風力発電は国内の自然エネルギー源で発電し、化石燃料のように海外に依存しない発電方式です。そのため、エネルギーの安全保障の観点でも注目されているのです。
洋上風力の種類
洋上風力発電には、どのような種類があるのでしょうか。
1.着床式洋上風力発電

着床式洋上風力発電とは、風車を支える基礎部分を海底で固定する方式で、水深が浅い海域に適しています。基礎部分は主に3種類(①モノパイル型、②重力型、③ジャケット型)あり、最も多く採用されているのはモノパイル式で、一般的とされます。
メリットは、下記です。
- 設計が比較的容易である
- 欧州における豊富な導入実績がある
そしてデメリットには、下記が挙げられます。
- 設置海域に限界がある
- 地震の影響を受けやすい
2.浮体式洋上風力発電

浮体式洋上風力発電とは、風車をアンカーやチェーンで固定された浮体構造物を設置する方法で、水深が深い海域に適しています。浮体構造物は主に4種類(①バージ型、②TLP型、③セミサブ型、④スパー型)あります。
メリットは、下記です。
- 設置海域が広い
- 地震の影響を受けにくい
デメリットには、下記が挙げられます。
- 技術開発段階であり、量産体制の確立がされていない
- 建設コストが高い
そして日本は、周辺海域が急峻な海底地形ですが、沖合は風が強く好風況域です。

加えて広大な排他的経済水域を要しているため、「浮体式」のポテンシャルはかなり高いことが期待されています。
洋上風力発電の現状を知る
日本の現状
日本政府は「洋上風力産業ビジョン」と称し、以下の3つの目標を掲げています。
- 2030年までに10GW、2040年までに浮体式を含む30GW~45GWの案件を生成する
- 我が国におけるライフタイム全体での国内調達比率を2040年までに60%にする
- 着床式の発電コストを、2030~2035年までに8~9円/kwにする

①の案件形成に関しては、これまで10海域(計3.5GW)で事業者選定がおこなわれました。(2025年1月)

浮体式に関しても、NEDO・省庁を中心に官民が連携し、技術開発やコスト削減に向けて実証実験をおこなっています。
海外の現状
海外では欧州と中国を中心に、世界中で洋上風力発電が急速に拡大しています。
着床式においては、100基以上の風車を設置している大規模商用洋上風力発電所が世界には数多くあり、浮体式においても導入が着実に進んでいます。そのため、日本企業と比較すると、欧州企業は技術的に進んでいるといえるでしょう。
下図は、各国の洋上風力発電の導入目標を示しています。 2033年には、世界全体で洋上風力発電の総容量が約488GWに達する見込みです。

洋上風力発電の課題には何がある?

様々なメリットが存在する洋上風力発電ですが、課題も多くあります。本章では主な2つの課題を解説します。
技術の確立
1つ目は、技術の確立です。
大型風車の設置には特殊な船舶や港湾設備が必要な点に加え、海底ケーブル・基礎・浮体の設置コストも非常に高価です。また、洋上での設置工事の技術開発も必要不可欠です。さらに風車の大型化により、タワーおよび浮体の構造の強度、風車の制御などといった”技術開発”も求められます。
将来的に需要が増えるとされる「浮体式洋上風力」の浮体構造物に関しても同様に技術開発が必要でしょう。このように洋上風力発電を進めるためには「技術の確立」が目下の課題といえます。
浮体サプライチェーンの構築
2つ目は、浮体サプライチェーンの構築です。
世界各国では洋上風力の導入目標達成に向けて、浮体式洋上風力発電設備の開発が予想されています。浮体の年間必要基数は、2050年には年間800基と推算されていますが、この基数を製造する浮体サプライチェーンは、未だ確固たる構築に至っていません。その理由として以下が挙げられます。
- 浮体基礎の構成部材全てを一貫で製造できる製造会社は少なく、このような会社の製造キャパシティは、大規模案件を2件同時に受注すれば数年先までロードが一杯となる。そのため、複数の製造会社の協力のもと浮体を製造する必要がある。
- 浮体デザインは現時点で100種類以上あることから、製造会社はどの浮体製造に注力し、設備投資をおこなうべきか判断が難しい。
- 浮体デザイン会社の多くはベンチャー企業であり、詳細な設計までおこなうリソースの確保が容易ではない。よって浮体詳細設計は外部発注されることも多いが、浮体基礎を作り上げるには多くのインターフェースが介在する。
- 事業者には、多数の製造会社、浮体デザイン会社、詳細設計会社間のインターフェース調整をおこなう人材が少ない(⇒事業者は各々の業務を担っているため、浮体基礎だけに注力することが難しい)。
洋上風力発電の今後の展開

洋上風力発電の今後は、発電コストの削減を目的とした洋上風力発電所の大規模化や、風車の大型化が進むという予測がなされています。
日本においては2050年のカーボンニュートラル実現に向け、政府の援助を受けながら「浮体式洋上風力発電の導入実績拡大実現」が期待されています。そのため、現在の課題である技術・浮体サプライチェーンの確立が急がれています。
まとめ
今回は、洋上風力発電についてのご紹介をしました。皆さまの参考になれば幸いです。
COMMENT
現在コメントはございません。