ESG投資とは?注目の理由やメリット・デメリットを解説

ESG投資とは?注目の理由やメリット・デメリットを解説

目次

    持続可能な社会を実現するための取り組みが世界中で進められているなか、地球環境の保全と経済発展を両立する方法として、投資の分野で注目を集めているのが「ESG投資」です。ESG投資とはどのような投資なのか、今なぜ注目されているのか、メリットやデメリットなどを解説します。

    ESG投資とは

    まず最初に、ESGの基礎知識をご紹介します。

    環境・社会・企業統治の観点からおこなう投資のこと

    ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つの要素を考慮しておこなう投資のことです。企業の財務面だけではなく、次のような非財務情報にも重点を置いて投資先を選定することで、適切にリスクを管理し、持続的・長期的なリターンの獲得を目指します。

    • 環境(E):温室効果ガスの排出削減や自然資源の保護、リスク管理などの環境活動 
    • 社会(S):労働者の待遇や人権、健康・安全管理、地域社会との関係、製品の品質・安全などの社会活動 
    • 企業統治(G):経営者のリーダーシップ、企業倫理、取締役会の構成や開示、報酬などの企業統治活動

    ESG資産の推移

    GSIA* が発表した統計によると、日米欧のESG資産の合計額は、2014年から2020年にかけて右肩上がりで増加しており、総運用額におけるESG資産の割合も増加傾向にあります。

    * Global Sustainable Investment Alliance:世界のESG投資額の統計を集計している国際団体

    GSIA「Global Sustainable Investment Review 2020:FIGURE 2 Snapshot of global assets under management 2016-2018-2020」をもとに作成 

    GSIA「Global Sustainable Investment Review 2020:FIGURE 2 Snapshot of global assets under management 2016-2018-2020」をもとに編集部作成
    日本の年金運用基金(GPIF)は、2015年のPRI署名を機にESG投資を始め、約200兆円の総運用額のうちESG投資の占める割合は、12.1兆円となっています(2022年3月末)。

    気候変動リスクの顕在化でESG投資が増加

    出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2021」(最終アクセス 2023/8/23) 

    ESG投資の規模が拡大してきた背景には、気候変動リスクの顕在化があるといわれています。

    QUICK ESG研究所が実施した「ESG投資実態調査2020」をもとに、資源エネルギー庁が発表しレポートによると、「国内の投資家が投資の際に重視する項目」の上位3位は「気候変動」・「労働慣行(健康と安全)」・「人権」となっており、「気候変動」を重視すると回答した投資家は、全体の94%を占めていることが分かりました。

    気候変動による災害の激甚化が増加しているなか、投資家は企業による気候変動リスクへの対応状況などの開示状況を、投資判断の一部として重視するようになりました。

    PRI提唱を機にESG投資に注目

    ESG投資の起源は、「社会的責任投資(SRI)」とよばれる投資手法にあります。SRIは1960年代以降、南アフリカ共和国のアパルトヘイト政策への反対運動、ベトナムでの反戦運動といった社会運動のひとつの手法として注目されました。1990年代~2000年代にかけて地球規模の環境問題が顕著になるとますます広がりを見せましたが、SRIは「収益よりも社会的責任を優先する」というイメージが強く、あくまで投資形態のひとつとして認知されていたに過ぎませんでした。

    この認識を変えるきっかけとなったのが、2006年に提唱された「責任投資原則(PRI)」です。アナン国連事務総長が機関投資家に向けて「投資の意思決定プロセスにESG要因を反映するべきだ」とするPRIを提唱したことをきっかけに、収益と社会的責任を同時に追求する「ESG投資」の概念が、広く認知されるようになりました。世界的なESG機運の高まりとともにPRIに賛同の意向を示す機関投資家や運用会社が増え、2023年5月時点での署名機関数は5,371*(うち日本は122)まで増加しています。 

    (*参照:PRI「Signatory directory」

    その後、度重なる企業の不祥事やリーマン・ショックによる金融危機を背景に、2010年に「英国版シュチュワードシップ・コード」(英国企業の株式を保有する機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンス)が制定されました。国内では、金融庁が2014年に「日本版シュチュワードシップ・コード」を公表し、中長期的に投資家・企業間で緊張感のある関係を構築する枠組みを整備しました。信託銀行、投信・投資顧問会社、生命保険・損害保険、年金基金など324の機関投資家が、コードの受け入れを表明しています(2023年4月時点)。

    このように国連や各国政府の主導のもと、機関投資家や運用会社が企業経営に関与する枠組みが形成されてきたこと、2015年にSDGsが採択されたことが後押しとなり、多くの企業が国連グローバルコンパクト* への署名しSDGsへの取り組みを始め、ESG経営へと舵を切るようになりました。

    * 国連グローバルコンパクト(GNGC)とは、国連と民間セクターが協力して健全なグローバル社会を築くことを目的として2000年に発足したイニシアチブ。署名企業・団体は、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野・10原則へのコミットメントとその実現に向けた継続的な努力が求められる。国内では552の企業・団体が署名している(2023年7月時点)


    ESG投資の手法

    ESG投資は次の7つの手法に分類され、複数の手法を組み合わせて運用するのが一般的です。

    1.インパクト投資

    社会的な利益や環境的な変革をもたらす企業やプロジェクトに資金を提供する手法です。金融的なリターンを追求しながら、社会的な影響を最大化することを目指します。

    2.ポジティブスクリーニング

    ESGの観点から評価の高い業種や企業に投資する手法です。

    3.サステナブルテーマ投資

    クリーンエネルギーや女性活躍など、特定のESG関連のテーマや課題に焦点を当てる手法です。

    4.国際規範スクリーニング

    ESG分野での国際的な基準をクリアしていない企業を投資対象から外す手法です。

    5.エンゲージメント・議決権行使

    企業との対話や株主総会での議決権行使により、ESGに関する改善や変革を促す手法です。

    6.ネガティブスクリーニング

    ESG指標に基づいて企業や資産を評価し、特定の基準を満たさないものを除外する手法です。環境破壊や人権侵害の疑いのある企業を除外するなどの例があげられます。

    7.ESGインテグレーション

    投資プロセスにESG要因を組み入れて投資判断をする手法です。

    また、下記は「ESG投資の手法別割合(国ごと/2020年)」と「戦略・国別 ESG投資 資産高(2020年)」のグラフです。

    GSIA「Global Sustainable Investment Review 2020:FIGURE 6 Sustainable investing assets by strategy & region 2020」をもとに作成

    GSIA「Global Sustainable Investment Review 2020:FIGURE 7 Global growth of sustainable investing strategies 2016-2020」をもとに編集部作成

    欧州では伝統的に「ネガティブスクリーニング」の手法が多く用いられてきました。しかし、「ネガティブスクリーニング」だけでは企業の行動変容にはつながらないという指摘もされるようになったことから、米国を中心に、企業に改善や変革を促すことができる「エンゲージメント」や「インテグレーション」の手法が拡大してきました。

    日本国内では、「ESGインテグレ―ション」が最多で、続いて「エンゲージメント」、「ネガティブスクリーニング」の順になっています。

    ESG投資のメリットとデメリット

    ESG投資のメリット

    ESG投資のメリットは、長期的かつ持続的なリターンが見込めることです。ESGに力を入れている企業は社会からの信用が大きくなり、持続可能な経営が可能になると考えられているからです。また、投資を通じて持続可能な社会の実現に貢献できることもメリットといえます。

    ESG投資のデメリット

    ESG投資のデメリットは、短期的な投資には適さない点です。ESGに力を入れている企業は、長期的な持続可能性を追求していることが多いためです。また、数字では表れない各企業のESGへの取り組みについて比較・検討をする必要がある点が、ESG投資の難しさだといえます。

    まとめ

    今回は、財務情報だけでなく、ESGに関連する非財務情報まで考慮しておこなう「ESG投資」についてご紹介しました。皆さまのご参考になれば幸いです。

    サステナビリティハブ編集部

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