2022.07.06
【食品業界】海外のサステナブルな取り組み事例や動向を紹介
目次
私たちの生活にとって欠かせない「食品」。食品業界には第1次産業から食品メーカー・外食業まで、さまざまな事業者が関わり、私たちの元へ食べ物が届けられています。
今回は、そんな食品業界のサステナブルな取り組みについて考えてみましょう。食品業界の現状から、海外の食品関連企業がおこなっている事例を詳しく紹介します。
食品業界の問題とサステナビリティ
食品業界における現状と課題
食品業界の課題としてまず筆頭に上がるのは、食品ロス(フードロス)です。
食品ロスとは、本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品のことですが、家庭で出る食品ロスの例は、食べ残しや使いきれずに捨てた食材以外にも、野菜の可食部分を過剰に捨てるとも含まれます。
さらに外食での食べ残しや、店などで売れ残った商品、規格外とされる品、返品された商品など、多くの食品が廃棄されています。 世界資源研究所(WRI)によると、2011年〜2012年の世界の温室効果ガス排出量の中で、食品ロスの割合は約8%にのぼっており、これは気候変動にも影響を与えているといわれています。
国連が提唱しているSDGsの17項目にも食品ロスに関する項目が設定され、日本でも2019年から「食品ロス削減推進法」が施行されるなど、業界全体で食品ロス解決に向けた意識が高まっています。(参照: 農林水産省「食品ロスとは」 )
海外企業のサステナブルな動向
SDGsの項目には、「2030年までに小売りと消費レベルでの1人当たり食品廃棄物を半減させ、食品の製造と供給における食品ロスを削減する(ターゲット 12.3)」という目標が設定されており、世界各国で積極的な取り組みがおこなわれています。
フランスは2016年に罰金付きの「食品廃棄禁止法」が制定されたほか、寄付または加工による売れ残り食品の使用や動物飼料への活用など、食品廃棄物削減のための行動の優先順位が環境法に追加されました。 同じく欧州では、寄付などによる余剰食品の再分配を促進するため、再分配事業者へ出資を決定したほか、大企業を巻き込んだ動きも進んでいます。
また、食肉生産のための水やエネルギー資源の消費を抑えるという意味で、プラントベース=大豆や植物を原料とした代替肉や乳製品の開発も世界的なトレンドのひとつといえます。
アメリカの大手スーパー・ホールフーズマーケットは2021年、史上初の「プラントベース食品のトレンド予測」を発表しました。このような動きからも、サステナブルな食品への注目度が高まっていることを読み解くことができます。
(参照:Whole Foods market「 Whole Foods Market releases first-ever plant-based trend predictions 」)
食品業界のサステナブルな取り組み事例
では、企業レベルでは具体的にどのような取り組みがおこなわれているのでしょうか。ここでは、海外を拠点とした企業の事例を紹介します。
コカ・コーラ:2030年までに水使用量の30%を削減へ
コカ・コーラボトラーズジャパンでは、グローバルなサステナビリティの目標に加えて、環境や日常生活、地域社会などの各課題を掲げ、積極的な取り組みを見せています。 「CSV Goals~共創価値創出に向けて~」というコミットメント目標を明示しており、2025年までにリサイクル可能な容器の100%採用や、2030年までに水使用量の30%削減などの目標を掲げています。
他にも環境保護団体や業界団体との幅広い連携、原材料の調達など様々な角度から目標達成に向けて活動しています。
スターバックス:使い捨て資材を減らす取り組み
スターバックスは、全世界の店舗で2020年末までに使い捨てのプラスチックストローを全廃することを発表し、現在ではFSC® 認証紙で作られた紙製ストローが提供されています。 また、「2030年までに二酸化炭素、水使用量、廃棄物の50%削減を目指す」というグローバルコミットメントを実現することを目標にしています。
日本国内でも、環境負荷低減を進めるために様々な実証実験を行うサステナビリティハブ(拠点)として皇居外苑・和田倉噴水公園に新店舗をオープンしました。テイクアウトに繰り返し使えるカップの利用を推奨したり、店内ではリユースできるマグカップを提供したりするなど、店舗から出る廃棄物量の約40%の削減を目指しています。
ユニリーバ:任天堂と連携、ゲームを利用した意識づくり
ユニリーバは、2025年までに食品廃棄物を半減(2019年比)することを目標に、多様な取り組みを行っています。環境負荷を低減した食の仕組みづくりと、人々のより健康な食生活を目指した「フューチャー・フーズ・イニシアチブ」と銘打った戦略のもとに、肉や乳製品の代替品を増やすなど、栄養面でも積極的に人々をサポートする姿勢を示しています。
ひときわユニークなのは、アプリやゲームを使った取り組みです。任天堂カナダと連携して、ゲーム「あつまれ どうぶつの森」の中で、バーチャルな食品廃棄物を現実の食料救助チャリティへの寄付に交換するなど、ユーザーの意識づくりにも貢献しています。(参照:Unilever「Tackling food waste」)
Kellogg:100%再生可能エネルギー実現の目標を設定
アメリカのシリアルブランド・ケロッグ社は、2021年にエネル・グリーン・パワー社と北米における長期電力購入契約(VPPA)を結びました。この契約の電力量は、北米製造拠点で使用される電力量の50%に相当し、ケロッグ社の掲げた「2050年までに世界中のすべての製造拠点において100%再生可能エネルギーに移行する」という目標に向けた新たな一歩となりました。
また、ESG評価においても、ケロッグ社は食品業界で上位15%にランク付けされ、世界で最もパフォーマンスの高い持続可能な企業のひとつとしての地位を確立しています(S&Pグローバル調べ)。
(参照: Kellogg 「 Kellogg ramps up efforts to achieve 100% renewable energy target」)
Qatar Aircraft Catering Company:機内食の余り・未提供の食品をコミュニティに寄付
カタール航空のケータリング会社・Qatar Aircraft Catering Companyは、2020年に機内食の余りや未提供の食品を、地元コミュニティに寄付することを発表しました。
寄付の取り組みは、2008年に開設されたカタール初のフードバンク、Hifz Al Naemaと提携して行われる活動で、フルーツやシリアル、ソフトドリンク、ヨーグルト、チョコレートなど、1日200キログラムから300キログラムもの飲食物が再分配されるということです。
使用済み食用油が持続可能な航空燃料=SAFに
また、世界の航空会社各社では、使用済み食用油などを航空燃料として利用する取り組みが広がっています。SAF(Sustainable Aviation Fuel)と呼ばれる持続可能な燃料は、使用済み食用油や植物・動物油脂、木質バイオマス、都市ごみ、排ガス、CO2などを原料として製造されます。
日本でも商用化が急がれており、2022年3月には国産SAFの商用化および普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」の設立が発表されました。ACT FOR SKYは、日揮ホールディングス株式会社、株式会社レボインターナショナル、全日本空輸株式会社、日本航空株式会社の4社が幹事企業となり、SAFの普及・拡大および日本の航空ネットワーク、産業界全体の発展と持続可能な社会の実現を目指しています。
(参照:日揮ホールディングス「国産 SAF(持続可能な航空燃料)の商用化および普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」を設立~SAF の認知度向上、航空セクターの脱炭素化への貢献を目指します~」)
まとめ
食品は、私たちが生きていくうえで欠かすことができません。だからこそ、サプライチェーン全体で未来を見据えた計画を立て、実行していくことが持続可能な未来に繋がっていきます。
今回は主に海外企業やグローバル企業での取り組みをご紹介しましたが、日本の同業界はもちろん、異業種に関わる皆さまにとっても、以上の事例からサステナビリティに取り組むためのヒントが見つかるかもしれません。