企業に求められる「再生可能エネルギー導入」とは|方法や事例を解説

企業に求められる「再生可能エネルギー導入」とは|方法や事例を解説

目次

    気候変動による自然災害や食料問題などが深刻化し、世界中で「脱炭素」に向けた動きが進む中、再生可能エネルギーを導入する企業が増えています。 しかし従来の電力から再生可能エネルギーへ切り替えるとなると、「どのような導入方法があり、どれを選ぶべきか」と悩まれる企業も多いことでしょう。 

    そこで今回は、再生可能エネルギーを導入する方法3つ・再生可能エネルギーへの切り替えを進めている企業の事例もご紹介します。

    再生可能エネルギーとは

    風力発電と太陽光発電

    再生可能エネルギーとは、資源に限りのある石油や石炭などの「化石燃料」からできるエネルギーとは異なり自然界につねに存在し、繰り返し利用できるエネルギーを指します。 

    2016年に施行された「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用および化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律 」においては、再生可能エネルギーは

    「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用できることが認められるものとして政令で定めるもの(第2条第3項)」

    と定義され、施行令では、再生可能エネルギーについて以下の7項目が挙げられています。

    1. 太陽光
    2. 風力
    3. 水力
    4. 地熱
    5. 太陽熱
    6. 大気中の熱その他の自然界に存在する熱
    7. バイオマス(動植物に由来する有機物)

    それぞれの再生可能エネルギーの特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。


    再生可能エネルギーを導入する企業が増加する背景

    サステナビリティに取り組む企業のイメージ

    企業のオフィスや工場などにも、再生可能エネルギーが導入されるケースが増えています。その背景には何があるのか、3つの視点から考えてみましょう。

    脱炭素を目指す動きの加速

    現在、地球温暖化問題が深刻化しています。その一因であると言われている温室効果ガスの排出を減らすために再生可能エネルギーへの注目が高まっていることは、皆さんも想像に難くないでしょう。

    パリ協定を機に、事業で用いる電力を100%再生可能エネルギーで賄う「RE100」という国際的な企業連合も誕生し、日本でも60社以上がRE100に加入しています。

    また、Appleが2030年までにサプライチェーンと製品全体でカーボンニュートラルを達成する目標を設定したように、取引先の大手企業から脱炭素に取り組むことを求められる場合も脱炭素を目指す動きは企業レベルでももちろん加速しており、脱炭素に取り組まないと今後、企業として生き残れないリスクもあるかもしれません。 

    (参照:Apple「Apple、2030年までの脱炭素達成へ前進クリーン電力を9ギガワット増やし、サプライヤーの取り組みを2倍に」)


    ESG経営の重要性の高まり

    昨今の投資の世界では投資先を選定するにあたって、財務情報のほかに環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3要素を考慮する「ESG投資」という考え方が注目されています。 

    企業が多くの資金を集めるためには、ESG投資の3要素を考慮した経営を実現することが求められるようになっています。再生可能エネルギーの導入などの「ESGを意識した経営に取り組むこと」が、投資家をはじめとしたステークホルダーからの信頼獲得や企業価値の向上につながると考えられています。

    ESG投資について更に詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。


    再エネマーケットの拡大

    再生可能エネルギーのマーケットの拡大も、再生可能エネルギーを導入する企業が増加する理由の一つと言えます。日本の再生可能エネルギーの導入量を見ると2012年から2018年にかけて約3倍に増加しています。

    再生可能エネルギー関連事業への新規参入も進んでおり、FIT制度・ FIP制度などによって新たなビジネス創出の動きもさらに活発化していくことが予想されています。

    (参照:資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」  )

    企業が再生可能エネルギーを導入する方法

    ここからは、企業が再生可能エネルギーを導入する主な方法3つを、メリットや課題なども含めて詳しく解説します。

    グリーン電力証書の利用

    グリーン電力

    1つ目に紹介する方法は、グリーン電力証書を利用することです。グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーで作った “グリーンな電力” が持つ価値を証書化したものです。

    これを購入することで、電力会社から通常通り電力の供給を受けていても、証書購入分の電力量について「再生可能エネルギーを利用した」とみなされる仕組みになっています。 

    例えば、再生可能エネルギー由来の電力を使用したいものの「建物全体で一括契約となっているため、自社では電気の切り替えができない」・「電力会社選びに悩んでいる」など、導入が難しい場合もあるでしょう。そこで通常の電力料金以外にグリーン電力証書を購入することで、自社の再生可能エネルギー割合を高めることが可能になります。さらに購入代金の一部が再生可能エネルギー発電事業者に支払われ、設備投資や設備の維持に活用されるため、結果として再生可能エネルギーの普及に貢献できるのです。

    この方法には、電力プランの切り替えや特別な発電設備の導入が不要で、手軽に利用できるメリットがあります。しかし一方で、法的な証明が担保されておらずに取引額が変動するというデメリットもあります。

    電力の切り替え

    再生可能エネルギー

    2つ目の方法として、事業で使用する電力を、従来の電力から再生可能エネルギー由来の電力へ切り替える方法が考えられます。電力切り替えには、電力プランの契約の変更手続きが必要です。主に以下の3種類のなかから選択することになります。

    再生可能エネルギー電気プラン

    多くの電気事業者が、再生可能エネルギーを電源としたプランを用意しています。プランによって再生可能エネルギーの割合は様々ですが、100%のものを選べば「二酸化炭素の排出量が実質ゼロの電力」といえます。

    これらのプランを利用することは、ESG経営の観点からも環境問題への社会貢献をアピールする材料になるでしょう。また企業の社屋や工場などに大規模な発電設備を設置する必要もなく、初期投資を抑えられるのも大きなメリットです。

    ただし通常の電力価格よりも割高なケースが多いほか、再生可能エネルギー電気プランを提供している電力会社によっては、プランの変更や解約時に違約金が発生する場合もあるため、十分な確認が必要です。

    リバースオークション

    リバースオークションとは、電力を消費する企業側が再生可能エネルギー由来の電力の最低価格を入札し、その条件にマッチした電気事業者を選定する方法です。一般的なオークションとは反対に、価格を競り下げて入札をすることから、リバースオークションとよばれます。

    再生可能エネルギーをより安価で利用できる点が大きなメリットです。ただしリバースオークションへ参加する際には過去12ヵ月分の電力使用量明細の提出が求められるため、事前に準備しておきましょう。

    再生エネルギーの共同購入

    再生エネルギーの共同購入とは、主に自治体が再生可能エネルギーの利用希望者を募集し、集まった個人や企業が共同で電力を購入する方法です。再生可能エネルギーの利用拡大を後押しするものとして期待されています。

    利用希望者が増えれば増えるほど購買力が高まって1社あたりの負担が減り、安価に利用できるのが最大のメリットです。

    一方で、再生可能エネルギーを提供する電気事業者を個別に選べないほか、料金プランもあらかじめ指定されているため、自由度の低い方法であるとも言えます。また自治体によって共同購入の募集タイミングや利用条件も異なるため、事前に十分な確認が必須となります。

    発電施設の設置

    太陽光発電設備

    3つ目にご紹介するのは、再生可能エネルギー発電施設を自前で設置する方法です。発電施設の設置例として、2つの方法を解説します。

    自家消費型太陽光発電

    自家消費型太陽光発電とは、発電した電気を自社で消費することを前提に発電施設を設置する方法です。この方法を選ぶ場合、自社で発電した電力を利用し、足りない分だけ電気を別途購入することになります。

    例えば自社ビルの屋上や工場の屋根、または自社が所有している土地などに太陽光発電設備を設置し、事業用の電力として消費すれば、毎月のランニングコストを節約できます。休業日が少なく日中の電気使用量が多い施設に向いていると言えるでしょう。

    しかし自家消費型太陽光発電は自社所有の資産となるため、導入コストやメンテナンス・故障時の修理にかかるコストを自社で負担する必要があることは押さえておきましょう。

    PPAモデル

    PPAモデルとは「第三者所有型モデル」ともよばれます。自社の屋上や屋根、敷地などのスペースをエネルギーサービス事業者へ提供し、事業者と契約して料金を支払うことで発電された電力を利用できる仕組みです。

    発電設備の所有者は事業者であるため、設備の導入やメンテナンスの費用を企業が負担することはありません。

    電気料金の支払いは必要であるため必ずしもランニングコストの節約につながるとは限りませんが、導入・運用保守のコストをかけずに再生可能エネルギーを利用できるメリットがあります。

    企業の再生可能エネルギー導入事例

    最後に、企業の再生可能エネルギー導入事例を3つご紹介します。

    【森永乳業】グリーン電力証書の購入

    森永乳業の再生可能エネルギー導入の取り組み出典:森永乳業「森永乳業のサステナビリティ」

    森永乳業では2019年度からESG経営に取り組んでおり、具体的な目標の一つとして「2021年度までに2013年度比8%の二酸化炭素排出原単位削減」を掲げています。

    同社の主力工場である東京多摩工場、大和工場、装置開発センター、および東日本市乳センターでは、東京電力エナジーパートナーとグリーン電力証書の購入契約を締結しました。これにより、上記4拠点で使用する年間600万kWh相当がグリーン電力へ切り替わり、年間で2,650tもの二酸化炭素排出削減が見込まれています。

    【EPSON】CO2フリー電力の使用・電源開発支援

    EPSONのCO2フリー電力の使用・電源開発支援の取り組み出典:EPSON「サステナビリティ」

     EPSONでは環境経営の指針として「環境ビジョン2050」を掲げており、10年間で1,000億円の費用を脱炭素・資源循環・環境技術開発に投下することを予定しています。

    この取り組みの一環として、国内の全製造拠点で使用する電力、年間530GWhを100%再生可能エネルギー由来のものに転換すると発表。1年で25万tもの二酸化炭素排出削減が見込まれています。

    同社は今後も電力の再生可能エネルギー化を進め、2023年までに世界に展開するグループ全拠点の電力100%転換を予定しています。

    【イオンモール】地産地消の再生可能エネルギー創出

    イオンモールの再生可能エネルギー創出の取り組み出典:イオンモール「サステナビリティ」

     イオンモールでは「全国各地にある約160のモールで使用する電力を、2025年までに再生可能エネルギーへ転換する」という目標を掲げています。

    これまで事業者との直接契約によって二酸化炭素フリー電力を調達してきたところから、順次「地産地消の再生可能エネルギー」への切り替えを推進。太陽光発電事業への着手やPPAモデルの導入を進めてきました。2040年度には「100% 地産地消の再生可能エネルギーでの運営」へ引き上げるべく、段階的に風力発電などの発電手法や水素エネルギー、蓄電池などの活用が行われる予定です。

    まとめ

    風力発電

    地球温暖化問題が深刻化するなか、世界中で脱炭素に向けた動きが進んでいること、さらに世界規模でESG経営への注目が高まっていることなどを受け、企業が再生可能エネルギーの導入に積極的に踏み出しています。

    今回ご紹介したように、再生可能エネルギーを導入するためには、グリーン電力証書の利用や電力プランの切り替え、発電施設の設置といった方法があります。それぞれの特徴をふまえて、自社に合った取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

    サステナビリティハブ編集部

    サステナビリティハブ編集部

    サステナビリティに関する情報を、日本から世界に発信していきます。