【メディアも注目!】衣類回収ボックスに古着を投函するとお買物券や寄付に!ユニークな衣類回収サービス「するーぷ」の実態に迫る

【メディアも注目!】衣類回収ボックスに古着を投函するとお買物券や寄付に!ユニークな衣類回収サービス「するーぷ」の実態に迫る

目次

    日揮ホールディングスのグループ会社であるJGC Digital株式会社は、神戸市が公募した「令和5年度 CO+CREATION KOBE Project」に採択され、 IoT機能付きの回収ボックスを活用した衣類回収の全国初の実証実験をおこないました(※2024年1月15日~2024年3月31日)。

    そこで今回は、同実証実験の概要や成果、また今後の展望などについて本プロジェクトのリーダーであるJGC Digital株式会社 代表取締役社長兼CTO 長谷川 順一氏にお話を伺いました。(インタビュアー:サステナビリティハブ編集部)。  

    JGC Digital株式会社 代表取締役社長兼CTO 長谷川順一氏

    メディアも注目の衣類回収サービス、「するーぷ」とは

    loT機能がついた衣類回収ボックス×ポイント付与サービス

    「するーぷ」とはどのようなサービスなのでしょうか。

    するーぷ」は、IoT機能が付いた衣類回収ボックスを駅などに設置することで、不要になった衣類(古着)を無人で回収し、ユーザーにポイント還元するサービスです。貯まったポイントは、寄付やクーポンに変えることが出来ます。

    するーぷの仕組み
    (出典:するーぷ公式ホームページ

    ビジョンには「「服を捨てない」ということを当たり前の社会にする」を掲げ、ポリエステル循環型社会の実現に向けて2024年1月15日~2024年3月31日まで、神戸市内の4か所*に回収ボックスを設置して実証実験をおこないました。(*デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)/神戸市営地下鉄 三宮・花時計前駅/神戸サンセンタープラザ センタープラザ/三宮オーパ)

    -loT機能を有した衣類回収ボックスは非常にユニークなアイデアですね。仕組みを詳しく教えていただけますか。

    ユーザーにはまずモバイルアプリケーション「するーぷ」をダウンロードしていただき、アプリ内でアカウントを作成してもらいます。事前準備はこの作業のみで、あとは投函したい衣類を回収ボックスまで持ってきていただければOKです。

    ボックスはアプリと連携しているため、回収ボックスのQRコードを読み込むとフタの施錠が解除されます。こうすることで、誤ってゴミや吸い殻などが入れられてしまうのを防ぐことができます。

    するーぷ衣類回収ボックス

    -そのほかにloT機能が活かされている部分はあるのでしょうか。

    ボックスに入れられた衣類の”重さ”が、投函後にアプリ画面に表示されるようにもなっています。ユーザーは重さに応じた”ポイント”をゲットでき、付与されたポイントはクーポンや寄付といった候補から自由に選んで交換できる仕組みです。

    するーぷアプリ画面
    (※イメージ図)

    -元は捨てるはずだったものが、自分に還元される形で返ってくるとお得感がありますね。回収ボックスを設置するにあたってこだわった点や工夫した点はありますか?

    今回の実証実験をおこなった神戸市は「ファッション都市」とも呼ばれていることから、回収ボックスのデザインにもこだわりました。多くの人の目につきやすいような色合いはもちろん、暖色を取り入れながら親しみやすさを持ってもらえるようにしています。

    実施期間中には、アプリ内にてユーザーが「するーぷ」した重量・寄付したポイント数をランキング形式で発表するなど、利用する皆さんが楽しめるコンテンツ作成もおこないました。

    実証実験に至った背景

    日本の衣類廃棄量データから見えること 

    -では次に、「するーぷ」の実証実験を実施するに至った背景などを教えてください。 

    環境省のデータ(「SUSTAINABLE FASHION これからのファッションを持続可能に」(2021年6月発行))によると、日本の家庭から手放される衣服のおよそ7割はゴミとしてそのまま廃棄されています。

    手放した後の服の行方のグラフ_環境省

    さらに1日あたりに焼却・埋め立て処分される衣服の量は平均で約1,300トンにもおよび、これは大型トラック120台分に相当します。こうした廃棄分をリサイクルやリユースに回して有効活用することができれば、地球環境に貢献できると考えました。

    ”捨てる罪悪感”から”ちょっといいこと”へ

    -処分・埋め立て処理に回される衣服がおよそ7割ということは、リサイクル・リユースとして循環する衣服は約3割だけなのですね。

    その通りです。特に世間一般では、「捨てる」以外の服の処分方法として「リユース」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ゴミとして廃棄せずに譲渡・寄付をするリユースは非常に意義のある取り組みですが、我々はこの「廃棄」の部分をどうにかして資源化できないか?と考えて、日々奔走しています。

    衣類回収ボックス
    (左上から時計回りに、神戸市営地下鉄 三宮・花時計前駅/神戸サンセンタープラザ センタープラザ/デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)/三宮オーパ)

    また、衣服を捨てる時は「もしかしてまだ着られる?勿体ない?」と、多かれ少なかれ罪悪感を抱いてしまいますよね。消費者のこうした抵抗感を軽減するのも、我々「するーぷ」の役目かもしれません。

    それだけでなく、ユーザーのモチベーションとなるインセンティブ(ポイント付与)も「衣類回収サービス」の普及に大きな役割を果たすと思っています。”捨てるはずだった衣服がポイントとして還元されるお得感”は人々の目に魅力的に映ると感じますし、「衣類回収に持っていくとちょっといいことがある」 と感じていただくことで、資源循環社会の実現に良い影響をもたらすと期待しています。

    実証実験の結果は?

    実証実験結果:約2か月半で8,130kgの回収に成功

    -2024年1月15日~2024年3月31日の実証実験では、どのような結果になったのでしょうか?

    今回の実証実験結果は、下記の通りです。

    (出典:するーぷ公式ホームページ

    まず、実験開始から約1ヶ月半の時点でアプリ登録者数は約1,500人にのぼり、合計1,500回以上の衣類投入がありました。平日では1日あたり約90kgの回収量を、休日には100kg以上を記録した日もあり、予想を超えるペースで目標を上回ったため非常に驚きました。

    最終的な回収総重量は8,130kgとなりましたが、これは想定していた以上の結果でした。

    またアプリを通しておこなったデータ解析では、20~50代の女性の利用者が最も多く、時間帯としては出勤・買い物のついでに利用してくださっていたことも明らかになりました。

    -アプリを通して属性を可視化できる点は非常に有益ですね。衣類の投入量に応じて付与されるポイントの交換先はいかがでしたか?

    商店街などで利用できるお買い物券に交換された方が多く見受けられましたが、サービス開始後に「令和6年能登半島地震に係る災害義援金」もポイント交換先として追加したところ、こちらを選んでくださった方も多かったのが印象的です。

    環境負荷低減への貢献だけでなく、実証実験を通して被災地復興にも貢献できたことを嬉しく思います。

    回収した衣服の64%がリユース・リサイクルに

    -回収ボックスで集まった衣服は、どのような割合で有効活用されたか教えてください。

    今回の実証実験では、回収した衣服のうちの約64%をリユース・リサイクルすることができました。

    (出典:するーぷ公式ホームページ

    日本における「手放された衣服のリユース・リサイクル率」は約30%ですので、良い結果を残せたのではないかと思います。実証実験に参加してくださった皆様、本取り組みをサポートしてくださった関係者の皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。

    するーぷ利用者の64%が「燃えるゴミに不要な衣類を出さなくなった」と回答

    また今後の参考のため、「するーぷ」の登録ユーザー約290名にアンケート調査を実施しました。その結果、サービス利用ユーザーの100%が「するーぷをまた利用したい」と回答してくださったほか、利用後の感想としては「燃えるゴミに不要な服を出さなくなった(64%)」、「環境に対する想い、ほかの回収サービスにも興味が湧くようになった(25%)」、「ものを買うときに本当に必要か考えるようになった」などが挙げられました。

    利用者の方々の行動変容を促すことができたと分かり、改めてこの取り組みを始めて良かったと感じています。

    【「するーぷ」利用者向けに実施したアンケート調査結果の詳細はこちらからご覧ください。】

    メディアの反響や結果から見えた今後の改善点は?

    「服を捨てない」が当たり前の社会を目指したい

    -「するーぷ」はそのユニークさが注目され、メディアにも多く取り上げられていましたね。実際の反響はいかがでしたか?

    ラジオや新聞・NHKニュースなど多様なメディアに取り上げていただき、報道後は利用者数が増加しました。 「回収ボックスをぜひ常設してほしい」とおっしゃってくださった利用者もおり、非常に印象に残っています。

    というのも我々は「着なくなった衣服を”捨てる”のではなく”回収に出す”」、この行動が当たり前の社会になることを目指し、本実証実験をスタートさせました。利用者の方が希望した「回収ボックスの常設」は、要らなくなった衣服を好きなタイミングで処分する、つまり「回収ボックスに持って行くことが当たり前である日常」に繋がり、我々が望む循環型社会の形成により近づくのではと考えています。

    衣類回収ボックスを開ける男性

    -今回の実証実験を踏まえて、改善点などは見えてきましたか?

    まずは回収ボックスの容量を見直したいですね。設置先の1つ、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)では、ボックス投函のための衣類を車でたくさん運んできてくださった利用者もおり、より大きなサイズのボックスの必要性を感じました。

    今後の展望や想い

    ゆめが丘ソラトスなど横浜市の複数箇所に衣類回収ボックスを設置予定

    するーぷ説明画面

    -最後に、今後の展望や長谷川さんの想いを教えていただけますでしょうか。

    今回の神戸市の実証実験を生かし、最終的には全国に取り組みを広めていきたいと考えています。現在はサービスの再開に向けて検討を重ねている最中ですが、直近では、相鉄グループが2024年7月に開業する相鉄いずみ野線ゆめが丘駅前の集客施設「ゆめが丘ソラトス」内に衣類回収ボックスを7月25日から設置することが決定しました(※試験的に1年間を予定)。

    あわせて「相鉄ジョイナス(3F)」と「ジョイナステラス二俣川(3F)」、「横浜ランドマークタワー(2F)」・「クイーンズタワーA棟(1F)」にも設置し、運用を実施する予定です。

    日揮グループが、相鉄グループのまちづくりに参画 | 2024年ニュースリリース | 日揮ホールディングス株式会社 (jgc.com)

    今回(2024年1月15日~2024年3月31日)の神戸市での衣類回収サービスを利用することができなかった方で本施設にご来訪が可能な方は、ぜひ「するーぷ」をご利用いただければ幸いです。

    「衣類」以外への展開も可能

    今回我々は「衣類」の分野での実証実験をおこなっていますが、こうした仕組みを、たとえば化粧品のプラスチックボトル・廃食用油(持続可能な航空燃料向け)など、他の製品への展開も可能と考えています。ゆくゆくは、日用品や化粧品メーカーなどと協業して資源回収の範囲を広げていきたいですね。 CSR*の観点からではなく、こうした回収事業をビジネスとして成り立たせ、持続可能なモデルに作り上げていく過程で検証し、様々な知恵を絞っています。(*企業が社会的存在として果たすべき責任)

    そのため、本取組みに賛同くださる市町村・企業の方々と一緒に良い未来を作っていきたいと強く願っています。1人でも多くの方に「するーぷ」のビジョンや実施内容に賛同していただき、ポリエステル循環型社会の実現に1歩ずつ近づけるよう励んでまいります。

    【するーぷ公式ホームページはコチラからご覧ください。】

    サステナビリティハブ編集部

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    サステナビリティに関する情報を、日本から世界に発信していきます。