2024.10.30
組織のレコグニション文化を育むピアボーナス制度とは?事例・ツールとあわせて紹介
目次
組織内のコミュニケーションを活性化させ、従業員がいきいきと働ける環境を整えたいと考えている経営者の方・管理職の方は多いのではないでしょうか。「メンバーが互いを信頼し合い、気兼ねなく意見を言い合える」組織では、イノベーションが生まれやすくなり、提供するサービスや製品の品質も向上するといわれています。
このような組織をつくるための土台となるのが、心理的安全性です。今回の記事では、組織における心理的安全性を高める手法のひとつである「レコグニション(Recognition:承認)」と、レコグニション文化を育む「ピアボーナス制度」についてご紹介します。
レコグニションを手軽におこなえるピアボーナス制度とは
レコグニションとは、「従業員がお互いの活躍に対して感謝や称賛を表明して認め合うことや、その仕組み」のことをいいます。このレコグニション文化を手軽に導入できる方策として近年注目を集めているのが、「ピアボーナス制度」です。(※ピアボーナスはUnipos株式会社の登録商標です)
従業員同士が感謝・称賛のメッセージや少額の報酬を送り合う制度
ピアボーナス制度とは、従業員同士が互いの貢献や成果に対して感謝・称賛のメッセージや少額の報酬を送り合える仕組みのことを指します。ピアボーナスという言葉は、仲間・同僚という意味の「Peer」と報酬・特別手当という意味の「Bonus」を組み合わせてつくられた造語です。これまでとは異なる新しい人事評価・報酬制度として、近年ピアボーナスを導入する企業が増えつつあります。
従業員にとって報酬は、所属している勤務先から支払われるものです。ピアボーナスが通常の給与や報酬と大きく異なるのは、従業員から従業員に送られる点にあります。従業員は報酬を受け取る側であると同時に、報酬を送る側にもなるという点がピアボーナスの大きな特徴です。
なぜ今、ピアボーナスが注目されているのか?
ピアボーナスが注目を集めている背景には、ビジネス環境の多様化が深く関わっています。働き方が多様化したことにより、「すべての従業員が同じ場所・同じ時間帯に顔を合わせて働く」とは限らなくなっているのが実情です。さらに、多彩な経歴をもつ人材が集まる組織においては、コミュニケーションの重要性が以前にも増して高まっています。従業員同士が相互理解を深め、円滑にコミュニケーションを図るための工夫が求められる時代になったといえるでしょう。
ピアボーナス制度は従業員同士が称賛し合い、承認し合うための仕組みとして有効です。多様化するビジネス環境において、従業員同士が信頼関係を醸成し、より良い職場環境の構築に寄与する仕組みとして多方面の企業から注目されつつあります。
ピアボーナスを導入する3つのメリット
ピアボーナスを導入することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な3つのメリットについて解説します。
1)職場のコミュニケーションが活性化する
従業員同士がお互いに感謝の気持ちを伝え合うことにより、職場でのコミュニケーションが活性化する効果が期待できます。ピアボーナスを送るには、周囲の従業員の良い面や好ましい行動を観察する必要があるため他者への関心が自然と高まり、お互いを認め合う職場環境を築いていけるでしょう。
ピアボーナスを送られた側の従業員は、自身の行動や発言が周囲に良い影響を与えていることを実感するとともに、ささいなことにも目を向けてくれる人がいることに気づくはずです。こうした積み重ねが、職場のコミュニケーションの活性化へとつながっていきます。
2)従業員エンゲージメントが向上する
ピアボーナスの導入は、従業員エンゲージメントの向上にも寄与します。従来は見えにくかった従業員の貢献が報酬という形で可視化され、称賛や承認を得られるからです。
従業員エンゲージメントを高めるための重要なポイントとして、「自分自身が必要とされていると実感できるかどうか」があります。組織にとって必要な存在だと実感しているからこそ、組織のためにいっそう貢献したいという気持ちになるものです。目に見える形で称賛や承認を受け取れることは、ピアボーナスの大きなメリットといえるでしょう。
3)生産性の向上と企業としての成長につながる
自身の貢献をきちんと見ている人がいること、具体的な評価が得られることは、組織風土の改善につながります。従業員の組織に対する貢献意欲が自然と高まっていくことで帰属意識が高まり、組織にとってプラスとなる判断や行動が促されていくからです。
たとえば、顧客対応ひとつとっても「マニュアルに記載されているから」「上長から指示されたから」といった理由で形式的に対応する場合と、自社の理念や提供価値を深く理解した上で自律的に対応する場合とでは、顧客満足度に大きな差が生じる可能性があります。従業員一人ひとりが丁寧な仕事を心がけるようになることが、結果として生産性の向上や企業としての成長へとつながっていくはずです。
ピアボーナス導入のデメリットと失敗しないための対策
ピアボーナスの導入には多くのメリットがある一方で、デメリットとなり得る面もあります。ピアボーナス導入のデメリットと、導入に失敗しないための対策を押さえておきましょう。
即効性は期待できない
ピアボーナス制度への理解が深まり、活用が浸透するまでにはある程度の時間がかかります。導入直後から顕著な効果が表れるとは限らないため、制度の認知と利用促進を目的とする社内広報活動の実施が求められます。
【必要な対策】
ピアボーナス制度の意義やメリット面について、従業員に対して丁寧に説明しておくことが重要です。会社側が一方的に導入を決定するのではなく、従業員の声に耳を傾け、必要に応じて意見を取り入れていく必要があるでしょう。
導入後の運用に成功するかが不透明
ピアボーナス制度を導入した時点では、想定どおりに運用できるかどうかは不透明です。一部の従業員に利用が偏ってしまったり、周囲から評価されやすい社員・評価されにくい社員が出てきたりすることもあり得ます。従業員が不満や不公平感を抱くことのないよう注意しなければなりません。
【必要な対策】
制度導入後は実際にどのように活用されているのかをモニタリングし、改善を図っていくことが大切です。あまり活用されていない部署やチームへの社内広報を重点的に実施するなど、実態に即した対策を講じていくことが求められます。
仕組みの導入にコストがかかる
ピアボーナス制度の仕組みを導入する際には、さまざまなコストがかかります。下記は想定されるコストの一例です。
・仕組みの構築にかかるコスト
・報酬に充てる福利厚生費
・運用コスト
こうしたコストを織り込んで、制度の導入と運用を推進していくことが求められます。
【必要な対策】
ピアボーナスの授受が可能なツールを活用することにより、仕組みの構築や運用にかかるコストを抑えられる可能性があります。必要な仕組みを自社で一から構築する場合と比べて、費用・工数の面で大幅な簡素化が実現するからです。ピアボーナス制度の導入時には、こうしたツールの活用もあわせて検討しておくことをおすすめします。
成熟した組織では効果が薄い
ピアボーナス制度は、組織のフェーズによっては導入効果が薄い場合もあります。すでに組織として成熟しており、従業員間の信頼関係が十分に醸成されている職場環境においては、あらためて少額の報酬を送り合うまでもないからです。
【必要な対策】
ピアボーナス制度の導入が適した組織のフェーズかどうかは、前述のメリット面と照らし合わせて判断するとよいでしょう。具体的には、下記のような点に課題を感じているようなら、ピアボーナス制度の導入効果を得られる可能性があります。
・職場のコミュニケーション活性化を図りたい
・従業員エンゲージメントを向上させたい
・優秀な人材の流出を防ぎたい
・生産性の向上と企業としての成長を実現したい
上記の条件に合致する企業は、ピアボーナス制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ピアボーナスの導入に役立つツール【5選】
ピアボーナス制度の導入時に活用できる5つのツールを紹介します。各ツールの主な特徴と、ツール活用がおすすめの企業について見ていきましょう。
UNIPOS
主な特徴 | ・毎週リセットされるポイント設計 ・リアクションスタンプのみでポイント贈呈が可能 ・ハッシュタグによる行動指針とのひも付けに対応 |
運営会社 | Unipos株式会社 |
公式サイト | https://unipos.me/ja/ |
日本においてピアボーナス制度が広まるきっかけとなったツールの1つです。ピアボーナス制度の浸透に役立つ機能が豊富に搭載されている点に特徴があります。たとえば、ポイントは毎週リセットされる設計になっているため、ツール活用の習慣づけに有効です。また、組織の行動指針をハッシュタグに設定しておくことにより、従業員の行動がどの行動指針に合致しているのかを可視化できます。ピアボーナス制度を効果的に周知したい企業におすすめです。
THANKS GIFT
主な特徴 | ・企業オリジナルコインを送り合える ・「ありがとうカード」で承認・称賛を手軽に伝えられる ・従業員のメンタルやコンディションを可視化する「パルスサーベイ」 |
運営会社 | 株式会社Take Action |
公式サイト | https://unipos.me/ja/ |
従業員同士のコミュニケーションを促進するツールと、貢献した従業員を表彰するレコグニション機能により、多様な角度からピアボーナスを活用できるツールです。従業員の行動データにもとづくパルスサーベイが可視化されるため、離職リスクを早期に検知し対策を講じることもできます。
TUNAG
主な特徴 | ・感謝の気持ちを伝え合う「サンクスカード」 ・社内チャットや社員プロフィール機能による対話の促進 ・従業員エンゲージメントの状態を測る「エンゲージメント診断」 |
運営会社 | 株式会社スタメン |
公式サイト | https://unipos.me/ja/ |
ピアボーナス制度をはじめ、社内での情報共有や申請報告、人材育成など幅広く活用できる機能を備えたツールです。ピアボーナス制度にとどまらず、組織を強化するための施策を総合的に講じていきたい企業に適しています。
TeamSticker
主な特徴 | ・企業のカラーに合わせたオリジナルステッカーの開発 ・期間限定のデジタルギフト贈呈 ・全従業員に向けたアナウンスメント機能 |
運営会社 | 株式会社コミュニティオ |
公式サイト | https://teamsticker.jp |
自社のオリジナルステッカーを利用でき、デジタルギフトを贈り合うことで従業員同士のつながりの強化に役立つツールです。Microsoft Teamsとの連携に強みがあるため、業務ツールとしてTeamsを活用している企業に適しています。
アザスオフィス
主な特徴 | ・従業員に限定しないプロジェクト型組織向け ・受け取ったポイントを指定の用途に利用できる (環境保全のための寄付、デジタルギフトなど) ・定型メッセージとフリーメッセージを組み合わせた交流 |
運営会社 | JGC Digital株式会社 |
公式サイト | https://teamsticker.jp |
成熟した組織では効果が薄くなるピアボーナスの弱みに対し、絶えず新しい人間関係が生まれるプロジェクト型組織に向けて開発されたサービスです。約80か国、2万件のプロジェクト遂行で培ったRespect & Careの精神を実現するツールであり、関係者全てが同じ目線を持ってプロジェクトを遂行することを目的としています。現在、限定範囲で利用しており、今後公開される予定です。
まとめ
ピアボーナス制度は、中長期的な組織の活性化と業績伸長に寄与する可能性のある仕組みといえます。ピアボーナスを導入するメリットやよくある失敗パターンを把握した上で、戦略的に制度を導入することが大切です。今回紹介したピアボーナスの基本的な考え方や導入に役立つツールを参考に、ピアボーナス制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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