【わたしの仕事と日常 #04】廃プラスチックガス化の技術開発(仕事編)

【わたしの仕事と日常 #04】廃プラスチックガス化の技術開発(仕事編)

目次

    日揮ホールディングス(以下、日揮HD)では、サステナビリティ関連の新事業の創造を担うため、2019年10月にサステナビリティ協創部(現サステナビリティ協創オフィス)を新設しました。今回の記事では、技術開発の側面からサステナビリティ関連の新規事業の創出を支える中堅社員に、事業や業務の内容、やりがいを感じる瞬間などについて話を聞きました。(インタビュアー:サステナビリティハブ編集部)

    「廃プラスチックのケミカルリサイクルのガス化」とは?

    ――鈴木さんは現在、サステナビリティ協創オフィス(SCO)でどのような事業の新規開発に取り組んでいますか。

    廃プラスチックのケミカルリサイクル*手法のひとつである「ガス化*」事業について、茨城・大洗の技術研究所を拠点に、技術開発の側面から支援しています。(「ガス化」の事業開発については、こちらの記事をご覧ください)

    *ケミカルリサイクル:廃棄物を化学的(ケミカル)に分子レベルまで分解し、精製して異物を取り除いたあとに化学合成・再製品化する手法
    *ガス化:混合廃プラスチックを部分酸化することで「合成ガス(一酸化炭素、水素で構成される混合ガス)」を製造する方法

    (ケミカルリサイクルやガス化についての詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。)

    ――本事業では、日揮のどのような既存技術や知見が生かされているのでしょうか。

    当社はこれまでオイル&ガスプラントのEPCで培った多くの経験やノウハウを活かして、廃棄物のケミカルリサイクルに取り組んでいます。それに加えて、廃プラスチックをガス化するプロセスとして、長期商業実績のあるEUPのサブライセンシングを受けることで外部の知見を取り入れ、開発スピードを促進させています。

    EUPは、世界で唯一の長期商業実績を持つ廃プラスチックのガス化技術なので、それが今回の事業の強みになっています。さらに「ガス化」は、ケミカルリサイクルの中でも不純物の多い低品位の廃プラスチック原料にも適用可能なため、市場規模もそれだけ大きいと期待されています。

    廃プラスチックリサイクルの概念図

    というのも、廃プラスチックは不純物が少なければマテリアルリサイクルできますが、多くは不純物を含むため、焼却によって発生する熱エネルギーを回収して利用する“サーマルリサイクル”に回されています。ガス化技術はそのようなプラスチックを分子レベルに戻して再利用できるため、地球規模での化石燃料の消費を抑制することができるというわけです。

    また、合成ガスからの水素やアンモニア、各種化学品への変換は当社が得意とする分野でもあるので、幅広い提案ができることも強みと考えます。

    EUPの適用原料の拡大に向けた取り組み

    ――鈴木さんはこの事業において、どのような業務を担当されているのでしょうか。

    廃プラスチックをガス化する「EUP」において、将来の適用原料の拡大に向けた検討をしています。

    EUPは既に20年以上の商業実績がありますが、対象となるプラスチックの組成は実績に基づく一定の範囲に決まっています。一方で近年はケミカルリサイクルのニーズが増えてきており、より広範なプラスチック種への適用拡大を目指して、技術研究所のラボ装置を使って基礎データの収集をしてきました。収集した基礎データから、実機で運転可能な組成範囲を推算します。

    ――業務を遂行するにあたって、様々な知識を調べながら実践していらっしゃることと思います。習慣的におこなっていることなどありましたら、教えていただけますか。

    私が所属するコラボエンジグループは、社内の他部門や外部からの依頼試験を遂行することが多いため、試験内容が変わるたびに常に新しい知識を学ぶ機会があります。もちろん学会など社外団体への参加もありますが、業務をしていく中で学びながら進めていることが多いですね。

    研究所は横浜本社から離れた茨城・大洗にあるため、社内ネットワークが作りにくいという側面があります。以前は機会があればなるべく横浜に出張するようにしていましたが、近年はオンライン会議も増えてその点は大分楽になったように思います。

    地球規模の影響を与える業務にやりがい

    ――業務を進める上で大変だったのはどんなことですか。

    EUPでは、低温ガス化炉と高温ガス化炉の二段階でガス化をおこなうのですが、ラボの低温ガス化炉の試験装置で、様々な廃プラスチックの燃焼試験をした際、発生した汚れが内部に付着し、配管が閉塞してしまったことです。その度に装置を分解して掃除する必要があり、なかなか大変でした。これは実機では起こらないことなので、試験装置ならではのトラブルでしたね。

    EUPイメージ図

    ――SCOでの仕事のやりがいを感じるのはどんな時ですか。

    試験業務をする上でやりがいを感じるのは、やはり仮説通りの結果が得られた時です。一方で、仮説とは全く違う結果になることもあり、それはそれである意味面白さを感じています。

    SCOでの仕事という意味では、地球規模の大きな影響を与える業務が多いため、自分の関わっている仕事がニュースや新聞に載る時は誇らしさを感じます。

    まとめ

    今回の記事では、サステナビリティ関連の新規事業「廃プラスチックのガス化」事業を、技術開発の側面から支える日揮HDの社員に、研究開発業務の内容ややりがい、面白さなどについて聞きました。

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    サステナビリティハブ編集部

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